「ドコドコドンドコドコドコドン、ドコドコドンドコドコドコドン、ッコンコンコン、ドンドコドン、ッコンコンコン、ドンドコドン、ドンドンドコドコドンドコドン、シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャン・・・」
この季節になると、御影の町のあちらこちらで、賑やかな太鼓や鉦の音が聞こえてくるようになる。町内の若い衆は、花見どころではない。1年ぶりの祭りが近づいてきたのだ。
祭囃子を練習するもの指導するもの、地車(だんじり)の埃を掃うもの、寄付を集めるもの、寄付を頂いた方の名前を掲示板に貼り出すもの、衣装を整理するもの、提灯の破れを点検するもの、保険会社に連絡するもの、寄付御礼の手拭いを準備するもの、当日のだんじりコースを確認するもの、買い物リストを作るもの、注連縄を作るもの、若い衆の仕事ぶりを目を細めて見ながらビールを飲んでいるもの・・・・・・・
世に祭り好きとかお祭り男とか言われるが、これは決して少数派ではなさそうである。ひらがなで「だんじり」をグーグルで検索すると、10万件をはるかに超える検索結果になる。祭り好きは、自分の衣装に刺繍で名前をいれる。ライターや煙草入れ、巾着など持ち物にも独特のおしゃれをする。地下足袋は、ナイキばりのエアーソールが主流だ。「だんじりや」という屋号の店まであって、こういった「だんじりグッズ」を扱っている。地車専門の工務店もあって、何年か前に訪問した時には、数千万円から何億円もする地車が数台制作中で、何年も先まで予約でいっぱいであるとの話を聞いた。何とも羨ましい業界だと思ったものである。
先述の祭囃子を練習をしていたのは、大体が中学生だ。私の町(ちょう)では、中学生になれば、はじめて大人として地車に係ることができる。まずは、鳴り物(囃子)の腕を認められ、祭り本番の鳴り物担当を指名されるのが彼らの大きな目標となる。高校生くらいになると、地車の屋根の上で踊る資格が与えられる。腰をくねらせて若い高校生や大学生が踊る姿は、色気があって、見せ場の一つである。社会人になると、いよいよ地車を直接動かす役割になる。最初は、後ろから押す役である。地車は非常に重く、神社の境内などでの練りなど、パフォーマンスを見せる時には、ここの力が大きく影響する。観客からは顔が見えず、地味だが重要なポジションだ。押し手の次は、地車の前の担ぎ手になる。棒鼻といわれる担ぎ棒に肩を入れ、男の逞しさを披露できる花形である。ここでの活躍が認められると、舵取り、地車の四隅で、地車の方向を変えたり各部署に指示を与えたりする役員、その中でも、右後→左後→右前→左前となる。さらに全体の運行を指示する責任者、子供たちを指導する責任者など、いくつかの責任者と、最高責任者である総括という役職に辿り着く。祭りは男だけの世界と思いきや、そうとは限らない。私の町では、若い女性たちも参加して、華やかさを演出する重要な役割がある。男とはまた違った女性らしい衣装が用意される。
加えて、祭りの表舞台には出ずに、食事や飲み物の準備などの裏方をする賄い方が、祭りを支える。
いろいろな組織団体の活力低下が言われる中、ここには明らかに非常に活性化された大きなコミュニティーが存在し、組織活動へのヒントがある。
・全員の共通の目的がある。
・子どもから老人まで、幅広い層の中で、それぞれの役割がある。
・1年に1度の明確なマイルストーンがある。
・育成のシステムが引き継がれている。
・全員で成し遂げる達成感がある。
・ピラミッド型の縦社会で、ガバナンスが実現されている。
あの神戸の大震災の時、人命救助・消防活動・防犯活動・物資配給・避難所運営などなど、この組織は大いに活躍した。
東灘警察署の向い側。「柳」の文字が掲げられているのが我が町の地車庫。
神戸の御影には11台の地車(だんじり)があり、今年は、5月3日と4日。見どころは、3日の18時前、阪神電車の御影駅から19時阪急電車の御影駅、提灯に灯が入り、とてもきれい。4日は弓弦羽神社の宮入10;30ごろから。
(上の写真の中央が私)
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