「ふつうベトナムには三つの性格が地質や資源や気候などによって作られていると考えられる。ハノイを中心とする北部、ダナンを中心とする中部、サイゴンを中心とする南部の三つである。
北部人は勤勉で、忍耐心に富み、思考が計画的である。組織力もゆたかで、団結力がある。けれど、自制心がつよく、なかなかハメをはずさず、口が上手で、手のこんだもののいいかたをする。
南部人はお人好しで、怠けもので、情熱的、衝動的であり、心で考えていることをすぐ口にだす。率直でもあり、軽薄でもある。親切で、おおまかで、おだてにのりやすく、気前がいい。
中部人はこの北と南のあいだをふらふらゆれている性格である。一つの特徴としては、海と山にはさまれてたいへん貧しいから、おそらくケチンボといえようか。
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もしここで労働ストをひとつの会社でやったとしましょうか。指令をだして計画をたてるのはきっと北部人ですよ。デモの先頭にたってビラをまいたり旗をふったりするのは南部人です。中部人はあっちへいったり、こっちへいったりします。・・・・」
小説家 開高健の「ベトナム戦記」の一節である。
「ベトナム人ってまじめでよく働くそうですね? おまけに、やさしくて素直で・・・」なんて尋ねられることがよくある。
誰が言い出したのか知らないが、概ね、このような印象が、少しベトナムに興味を持つ日本人の間で形成されてきている。
「御社のベトナム人ってまじめで・・・・?」と尋ねられれば、胸を張って、「その通りです。」と応えるのであるが、「ベトナム人は・・・?」となると、いささか難しい。鋭い小説家の視線でもって、北部、南部、中部の性格を表現するのは興味深く、納得できるものだが、いざビジネスの場での質問となると、そうはいかない。
北部人・南部人・中部人をベトナム人に置き替えて読み直してみると、ベトナム人は、勤勉だけど怠け者、慎重な者もいれば、おっちょこちょいもいる。
要するに、ベトナム人といっても、いろいろな性格があるということになる。
ビジネスの場では、先入観を捨て、自らの目で人を見抜くことが必要であることは、相手がどこの国の人であっても同じことだろう。
同じく「ベトナム戦記」の中に、次の一節があり、私は、妙に共感している。
「長い長い忍従の歴史から彼らはやっと知ったのだ。・・・・
なせばなる、なさねばならぬなにごとも、ならぬはひとのなさぬなりけりと歌いだしたのである。
この国のあらゆる現象の背後に、理解の第一歩としてこのことを考えるべきであろう。」
私は、この国を知るようになって未だ7年程だが、わいわいがやがやの中の何気ない瞬間の中に、この国の計り知れない深さ、奥に隠れたエネルギーと集中力を垣間見て、一瞬、立ち止まってしまうことがある。
残念ながら、これがなかなか表に出てこない。出てきたかなと思うとすぐに引っ込んでしまう。
長い歴史の中で培われた彼らの財産を、日本人がコントロールできるなどというようなことは毛頭考えてはいないが、ベトナムでのビジネスでは、このエネルギーの一部でも表に引っ張り出すこと、彼らの体の中のスイッチをONにさせることができればすばらしい。
ベトナム人の本質を良く考察した文章で、開高健を引用するところがGoo!です
今度はベトナム人の生活と女性論を読みたいです
投稿情報: ken Yuki | 2008年11 月20日 (木) 11:01